嶮暮帰島のいきもの コシジロウミツバメ その2

手袋についている赤いのは、コシジロウミツバメの吐瀉物

コシジロウミツバメは、体長21cmの小さな海鳥です。土に穴をほって巣穴としますが、体は小さく、穴を掘るには非力です。したがって、石が多い場所、硬い土、ササの根が張っているような掘りにくい場所では、巣穴が掘れません。嶮暮帰島は台地上の島で、上部の台地では嘗て、耕作と放牧が行われており、畝や土塁が各所に残っています。よって、ササが生えていない傾斜地、畝、土塁などの凹凸のあり、水はけの良い場所が巣穴を掘る場所に選ばれます。しかし、巣穴を深く、丈夫に掘れるわけではないので崩れやすいものになります。特に人間が歩くと巣穴を踏み抜いてしまうことが多々ありました。 私が2000年に調査するまでは、そのような状況は知られていなかったため、嶮暮帰島の台地上の部分を自由に歩きわまっていましたが、現在は歩くコースが決められ、コシジロウミツバメの巣穴を踏み抜かないように配慮されています。

コシジロウミツバメの巣穴

 トウキョウトガリネズミの捕獲場所は、台地部分ではなく低地の海岸部分で、過去に昆布を干すための干場だった場所が主です。干場は石を敷き詰めて作られます。昆布干しとして利用されなくなって、場所によっては60年以上経過しているところもありますが、未だに石が多く、墜落函を埋めるために穴を掘るのは結構大変です。しかし、墜落函を掘るときにコシジロウミツバメの巣を破壊することはありませんので、とても気が楽です。

コシジロウミツバメは、弱くて、不器用な鳥です。日中、巣穴から出てしまうと陸上では動きが遅く、オオセグロカモメ、カラスなどに襲われてしまいます。したがって、島ではこれら捕食者の活動が低下している夜間に行動します。襲われても、鋭い嘴や爪があるわけではありませんので、唯一の抵抗が胃の内容物を吐くことです。オキアミを食べていますので、吐瀉物は血のよう赤くて、臭いですが、ほとんど防御になっていないような気がします。また、着地が下手です。巣の位置を知られないように、少し離れたところに降りますが、その降り方が着地というより落下という感じです。そして、よたよたと巣穴まで歩いて行きます。
トウキョウトガリネズミの捕獲地内には巣はないのですが、巣は周辺にありますので、調査地内に落ちてきます。さすがに、歩いている人間にむかっては落ちて来ませんが、テントにぶつかったり、罠の側に落ちてきたりします。暗闇の中で出会いますので、何度もびっくりさせられます。

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