トウキョウトガリネズミの体温は38℃前後で人間よりも高い(修正知見)

トウキョウトガリネズミの体温は、サーモグラフィーで計測したところ最低36℃程度はあると2020年1月3日に注として過去のブログに記載しましたが、その後も機会があるたびに計測していたところ、今回最高値38.6℃を確認しました。

2024年秋に嶮暮帰島で捕獲し、飼育小屋で越冬したトウキョウトガリネズミ(雌)が、2025年春先から換毛がうまくできず、はげては毛が少し生えてくるのですが、完全に生えそろわず、またはげてしまうということを繰り返し、最終的にはずっと背面から尻にかけてはげた状態になりました。地肌がむき出しの状態が数ヶ月続いた時にサーモグラフィーで計測を行いました。

以前は、体毛で覆われていた時に計測してもので、大体36℃前後の数値を示していました。体毛で覆われているので、断熱効果がありますので、計測値は少し低い値であると考えていました。

今回、体の半分程度がはげた状態になったので改めてサーモグラフィーで計り直してみました。その結果、37℃後半から38℃前半の数値が計測されました。そして、7月8日20時ころに計測した値が最高値で38.6℃でした。飼育小屋では夏はエアコンを使用しており、25℃以下に保つようにしてあります。細かい条件など考慮すると色々と考察する点ありますが、とりあえずトウキョウトガリネズミの体温は36℃よりは高く38℃程度が通常で、人間より体温が高めということが判明しました。

トウキョウトガリネズミの地肌の温度
トウキョウトガリネズミの地肌の温度
計測した状態のはげたトウキョウトガリネズミ
死亡時の状態

ズートピアのMr.ビックはトガリネズミ? その2(改めてトガリネズミの鼻を良く見てみました)

私には、Mr.ビッグの鼻先は、少しへこんでいるように見えて、ブタというよりもゾウの鼻先に様にも感じました。そして、トガリネズミの鼻先は、ピンク(肌色)ではなく、茶色だったことに気がつきました。

まず、トガリネズミの鼻の基本形は、以下の写真の様になります。鼻の形はブタやゾウの様な鼻ではなく、イヌやネコの様な鼻先をしています。色は、茶色から黒に近いです。実は、トガリネズミの鼻の写真を改めて見直してみますと、鼻の先端は茶色ですが、鼻の穴の周辺は肌色でした。鼻は黒いというイメージを持っていましたが、それは標本(死んだ個体)を観察していましたからで、生きている個体の写真を見直して見ますと、鼻全体が茶色という訳ではないことに、改めて気がつきました。なお、トガリネズミの鼻の形(鼻の穴の形)は、属によって形が違うことが知られており、アメリカで良くみられる属は、北海道にいるSorex属とは異なりますが、基本形には差はありません。

オオアシトガリネズミの鼻(クリックすれば拡大します)
オオアシトガリネズミの鼻(クリックすれば拡大します)

また、改めて写真を見直して見ますと、鼻先の色には顕著な個体差があることにも気がつきました。下の写真はトウキョウトガリネズミの写真で、鼻先の色が茶色というよりも肌色に近い個体もいることにも気がつきました。(興奮していると鼻の色も変わるかもしれないと思いましたので、今後これについて検証してみたいと思います。)

トウキョウトガリネズミの個体差の例(クリックすれば拡大します)
トウキョウトガリネズミの個体差の例(クリックすれば拡大します)

しかし、多くの個体の鼻先は茶色で、北海道に生息する4種とも同じ感じになります。

北海道に生息するトガリネズミの鼻先比較(クリックすれば拡大します)
北海道に生息するトガリネズミの鼻先比較(クリックすれば拡大します)

ということで、ズートピアのMr.ビックは、トガリネズミを知っている人であれば、トガリネズミと分かるように描かれていますので、鼻の形や色でいちゃもんをつけるつもりは毛頭ありません。むしろ、多くのことを学ぶきっかけになりましたので、とても見て良かったです。また、地下帝国のボスみたいな位置づけも、実際にはそのような生態かもしれないとも想像することもありますので、とても興味深いです。ただ、凍らせるぞと脅し文句は彼らの生態のどこにつながっているのかに悩んでいます。キャラクターの設定をした人は、結構動物のことを詳しく知っている人ではないかと思います。何回も見直して、色々と考察するきっかけを得たいと思えたとても興味深い映画でした。

 

謹賀新年 ズートピアのMr.ビッグはトガリネズミ? その1(かわいいトガリネズミと認識できるが何か変かも・・)

あけまして、おめでとうございます。

昨年は2回しか更新ぜず、あっという間に過ぎてしまいました。調査や研究をしていなかった訳でなく、日々の作業で目一杯で、ブログを更新する元気がなかったのが現状です。言い訳はさておき、今年こそ、少しブログの更新をしていきたいと考えています。

さて、昨年末から、勉強会の仲間や同僚から「ディズニーのズートピアにトガリネズミがマフィアのボスでMr.ビッグとして登場しているよ。」と教えてもらいました。ということで、昨年末から本日午前中まで、ディズニープラスでズートピアとズートピア+を見ました。まだ、1回しか見ていませんので、何回か見ると別の見解になるかもしれませんが、面白いと思ったことがありましたので、今年最初はMr.ビックについて気がついたことを書いて見ました。

Mr.ビックを含めたファミリー(トガリネズミ)の最初の印象は、ネズミと区別して描かれており、トガリネズミを意識して描かれていると思いました。しかし、ストーリー上ではトガリネズミという言葉はなかったと思いますので、Mr.ビックをネズミではなく、トガリネズミとして認識した勉強会の仲間や同僚はトガリネズミに興味を持ってくれており、意識的にネズミと区別してくれたことにうれしく思いました。(少しは、トガリネズミという動物名が浸透してきたということで、うれしいです。)また、Mr.ビックを含めトガリネズミはかわいく描かれていてかわいいと思いました。

しかし、デフォルメされているとは言え、少しトガリネズミとしては違和感を持ちましたが、最初はよくわかりませんでした。あえて言うなら気になっていたのは、口先というのか鼻先が、全体的にいやにピンク色しているということでした。妻にMr.ビックの映像を見せたら、「豚の鼻みたいで変!」と速攻で一言。そう!そうでした。鼻の形と色が変でした。著作権の観点から、Mr.ビックの映像が掲載できませんが、トガリネズミの鼻の色と形状について考察してみたいと思います。(次回に続く)

トガリネズミ類の鼻の基本形(オオアシトガリネズミの鼻)

トウキョウトガリネズミ展 2025 in しらぬか ファンミーティング 開催のお知らせ

今年も、北海道の白糠町公民館でトウキョウトガリネズミ展を8月2日から開催しています。今週末の8月17日(日)は、「トガリネズミづくりしの1日! トガリネズミファンミーティング」を開催します。

午前中の生息地ツアーの受付は定員に達しましたので、受付は終了しおりますが、13:30から15:30の講演会は、予約なしで参加していただけます。定員は60名程度を想定しており余裕がありますので、興味のある方はぜひご参加ください。

内容としては、トウキョウトガリネズミの生息である恋問海岸に建設された白糠の道の駅で行った環境保全対策を通して、トガリネズミの魅力と生きものがすみやすい環境について考える場にしたいと考えています。

私からはトウキョウトガリネズミの何気ない1日の行動の紹介、写真家の六田氏からは、六田氏が深みにはまっているトガリネズミのナゾについて、最後はトガリネズミに関する疑問や魅力を共有し、トガリネズミの視点で見る生きものがすみやすい環境について参加者との意見交換の場とする予定です。

本展示の会期は8月24日(日)までです。ファンミーティングに参加できなくても、期間中は生きたトウキョウトガリネズミ含め北海道に生息しているトガリネズミ類全4種を見ていただけますので、ぜひご覧いただければと思います。北海道に生息している全4種を一度に見ていただけるのは、世界的にもこの展示会のみです。現時点では、4種同時展示の予定は当面ありませんのでこの機会にぜひ見ていただければと思います。

謹賀新年 トウキョウトガリネズミ冬だからわかること01

明けましておめでとうございます。

昨年は、ほとんど更新せずあっという間に1年が過ぎてしまいました。現在トウキョウトガリネズミ7個体、オオアシトガリネズミ4個体、エゾトガリネズミ1個体の計12個体を飼育しています。昨年8月末から白糠町で行ったトウキョウトガリネズミ展後は、最大20個体を飼育していた時期もありました。世話だけで2時間以上かかり、到底HPを更新する時間的・体力・精神的余裕が無くなり昨年はあっという間に過ぎてしまいました。しかし、正月休みになると気分的にも、時間的にも少し余裕がでるのでHPを更新しなければと書き始めます。今年は昨年より更新回数は越えるように頑張る予定ですので、また見に来てください。

新年になるとトウキョウトガリネズミの冬に関する情報から書き始めることになるのが常です。今回もこれに従い、冬だからこそわかりやすい、わかることをまとめてみたいと思います。

冬季になると飼育下では必ず水が凍結します。自然界でも当然凍結しますが、トウキョウトガリネズミなどのトガリネズミ類はどのように水を摂取しているのか、疑問に思ったことはありませんか。そのことは、後ほど紹介しますが、本日は水入れが凍ると顕著に起こる現象をまず紹介したいと思います。

トウキョウトガリネズミは、餌箱や水を入れた容器内で排泄をすることは基本的にしません。しかし、ヒメトガリネズミ・エゾトガリネズミ・オオアシトガリネズミは個体差はありますが、餌箱や水入れ内で平気に排泄します。特にオオアシトガリネズミは顕著です。しかし、冬になるとトウキョウトガリネズミのほどんどの個体は水入れで糞をするようになります。今回それについて数回に分けて紹介します。今回はまず水入れに排泄している状況を紹介します。

個体差はありますが、一晩で下に示したように水入れが糞にまみれてしまいます。当然餌替えする時には、凍結していない水を入れています。さて、どのようなことが起こっているのでしょうか。想像してみてください。

トウキョウトガリネズミの餌と水の状態
【拡大】トウキョウトガリネズミの水入れの状態
2025年1月1日17:10の飼育小屋の気温(ー2.8℃)

今年も8月31日からトウキョウトガリネズミ展を白糠町で開催します!

今年も、北海道の白糠町でトウキョウトガリネズミ展を開催します。期間は8月31日から9月16日までです。9月15日(日)には、トウキョウトガリネズミの頭骨と北海道に生息する哺乳類の頭骨を実際に触って比較してもらう講習会とトガリネズミに関する疑問・質問・思いなどを自由に語りあうファンミーティングを開催することにしました。興味ある方はぜひお越しください。

講習会の内容などは、これから時々ブログで紹介します。なお、今回は完全予約制です。下記のチラシの二次元コードか、このHPに「トウキョウトガリネズミ展2024 in しらぬか」という紹介ページを作成してありますので https://www.least-shrew.jp/shrew/?page_id=2795)そちらに記載してあるURLからお申し込みください。

多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

北海道産トガリネズミ4種の大きさ比較の固定ページを更新しました

トガリネズミの基礎情報「北海道産トガリネズミ4種の大きさの比較」のページを動画に変更しました。トガリネズミの基礎情報の固定ページの情報が古くなっていたり、間違いが見つかったりしていますので、修正及び更新をこれから随時行っていきます。まずは、「北海道産トガリネズミ4種の大きさの比較」からです。

トガリネズミを飼育していると個体だけではなく、種としての性格というのか行動特性があるように見受けられます。この動画は、それを比較的表している内容になっていると思いますので、「トガリネズミの基礎情報>北海道産トガリネズミ4種の大きさの比較(動画)」をご覧ください。

あと、トガリネズミ形目は現在真無盲腸目に変わりましたが、これからこのページの更新を行いますので、少々おまちください。なお、トガリネズミ目をトガリネズミ目に修正してあります。環境省のレッドデータリストなどでは、トガリネズミ目と記載されていましたので、それに準拠していたのですが、その他の図書はトガリネズミ形目となっていましたので、環境省の野生生物課に確認をしたことろ、どうも誤植だったようです。「なぜ型になっているか分からない」という回答でした。

トウキョウトガリネズミの探知範囲?(触毛編)

トウキョウトガリネズミに関する質問の中で多いのが、「どのようにして餌を取るのですか」です。それに関する内容は以前のブログにも書いていますが、改めて、観察されていることから整理して順次考えていきたいと思います。

今回は、髭(触毛)について考えてみます。ネコも犬も触毛から色々な情報を収集していることはご存じだと思います。トウキョウトガリネズミも同じく、触毛から情報収集していると考えられます。

トウキョウトガリネズミの触毛の範囲について検証してみたいと思います。

触毛の長さには長短があり、その本数も個体差や損傷なども見られるので正確にはわかりませんが、体より外側にでている長い触毛は、大概の個体では片側だけで10~12本程度が確認できますので、全体では24本程度生えています。その長さは8~10mm程度です。吻の先端近くや顎の下にあるものは短く1mm未満のものから2mm程度まで様々な大きさのものが生えています。その数は、損傷もあるみたいで判別できないものもあるので不明ですが、片側で10本以上は確認できますので、長い触毛と同じかそれ以上あると思います。(小さい触毛についてはまだ確認個体数が少ないので現時点では参考程度です。)

図1のようにトウキョウトガリネズミの触毛による接触して情報収集できる範囲は、触毛が生えている吻の幅約2mmを考慮すると直径18~22mm程度の範囲になります(触毛は湾曲しているのですこし短くなります。)。胴の幅は骨格的には約15mmですが、生きている時は体毛は膨らみますので、それらを考慮すると体の中心線から片側だけで考えますと、胴体の片側の幅と同じだけ胴体より外側に触毛が出ていることになります。

図2は横から見た写真です。通常は、これくらいの範囲を対象にしていると思われます。しかし、触毛は動かすことができ、前方に集中しているときは、図3のように触毛を前方に倒したり、休息しているときは、図4のように体につけたりすることもあります。広範囲の情報を得ようとしたり、特定の方向だけの情報を収集しようとしたりする触毛の動きは、まるでパラボラアンテナを広げたり、しぼったりしているように見えます。

 

図1 トウキョウトガリネズミの触毛による標準探知範囲(個体差は若干あります)
図2 通常の行動時の触毛範囲を横からみた状態
図3 前方の状況を最大限探知しようとしている場合は、触毛を前方に倒している。
図4 安心していたり、探知しようとしていない場合は、触毛は通常よりも体に沿って倒されている。

冬季の飼育状況について 3

トウキョウトガリネズミの冬毛と夏毛の差が分かり難いですので、その差を下記の写真で比較してみました。冬毛は、夏毛と比較すると背面が黒く、腹面は白くなりコントラストが強くなります。また冬毛はビロード状に見えますが、夏毛が剛毛感が強いです。地肌の色はピンクですので、夏毛の時は毛が薄いところで、地肌のピンクが見え隠れしますが、さすがに冬毛の場合は見えません。また、冬毛にも個体差がみられ、写真のように黒く見えるものもあれば、白っぽく見える個体もいて、結構バリエーションが見られます。

 

左が冬毛。背面は黒く、腹面は白くなり、コントラストがはっきりする。右は夏毛から冬毛に換毛し始めた時。背面の黒い部分が換毛が始まった部分。この黒い部分が全面になると左の写真のようになる。
冬毛でも、白っぽく見える個体

冬季の飼育状況について 2

元旦に続いて、2日にも大きな災難が起こってしまいました。元旦に地震がおこらなければ、この航空機事故も起こらなかったかもしれません。なくなられた方のご冥福をお祈りします。

冬季の飼育状況についての続きですが、極寒に冬眠しないなら、冬毛はどのようになっているかという質問を良くされます。さぞやモコモコになっているのではと思われると考えます。しかし、飼育していると個体差があり、換毛が途中で止まっていたりします。まずは、現在飼育しているトウキョウトガリネズミ3個体とヒメトガリネズミ1個体の状況を見てください。同じ状況で飼育しているにも関わらず差があることがわかってもらえると思います。冬毛と言っても様々な状態が確認されていて、奥が深そうです。

ヒメトガリネズミの換毛状況。背中の黒くなっている部分が冬毛。
トウキョウトガリネズミ飼育No.6。全体的には夏毛みたいだが、背中の右側面(写真では左側)の一部が黒くなり始めている。
トウキョウトガリネズミ飼育No.7.首と背中の境目で黒くなっているところが冬毛。
トウキョウトガリネズミ飼育No.8。全体がまだ夏毛みたいな色。