展示を楽しんでもらうためのヒント(オオアシトガリネズミ編)

飼育していると個体の個性が出ます。展示しているオオアシトガリネズミは、流木の下がとてもの好きなようです。飼育ケージの中に入れてある流木は、かなり外からも見えるような構造になっていますが、本人にはあまり周囲から見られているという認識がないようです。寝ている姿や毛繕いなどリラックスしている行動が見る事ができます。

オオアシトガリネズミの多くは、飼育ケージ内にある草を丸めて巣を作り、そこを主に利用する個体が多いですが、今回草が少なめになっていることもあり、流木の下を主に使っているのかもしれません。しかし、多くの個体は、草が少なくても草を集めてボール状の巣を作りますので、展示している個体は他の個体よりも流木の下を好んでいるように見えます。

私は、オオアシトガリネズミの行動は見ていると、ちょっとドジなやつだけど、憎めない可愛いやつと感じてほのぼのとします。みなさんはどのように感じますでしょうか。今回、オオアシトガリネズミの行動は展示している4種の中でも良くみることができますので、少し長めに見てもらえればと思います。

展示個体のオオアシトガリネズミは、流木の下がお気に入りで、寝ている姿やくつろいでいる姿を見る事ができます。

トウキョウトガリネズミがくわえて運びあげることができる重さ

トウキョウトガリネズミが、草のつぼみの中に入っている写真をこのサイトに頻繁にアップしています。冬になって寒くても、小屋の中では時々利用しています。さすがに2ヶ月も利用すると汚れてきます。

汚れてきたので別のつぼみを利用し始めた数日前から、珍しい光景が見られました。それは、にお気に入りだった草のつぼみの中に、ミルワームが4個体おかれていました(下写真)。すなわち、25cm程度ある高さまで、くわえて運び上げたことになります。その重さを計ってみました。0.04g、0.05g、0.05g、0.06gでした。

トガリネズミの大きさが頭胴長5cmで体重が2gだったとすると、体重の2.5%のものを身長の約5倍までの高さまで運んだことになりますので、身長170cm、体重60kgの人間が1.5kgをくわえて、8.5m程度まで登ったという感じになるのでしょうか?

例え方に突っ込みどころもありますが、まあ銜えて登ることを想像してみてください。その力の強さをどう考えますか?ちなみに、これまで一番重かった例は、石で約0.1gでした。

なお、このミルワームを取り除いたら、翌日には4個体のミルワームが再び運び上げられていました。

中央の茶色線状のものが、運び上げられたミルワーム

冬の飼育下のトガリネズミ ~禿げる(脱毛)その2~

現在飼育しているオオアシトガリネズミにも禿げ(脱毛)始めた個体がでてきました。禿げ始める場所は、個体によって変わりますが、お尻から禿げてくる個体が多い気がします(過去の記録をすべて確認したわけではないので・・・)。

この個体は、一見すると禿げて無いように見えるのですが、見る角度や体を伸ばした状態にすると目立ようになってきました。体毛の下は、きれいなピンク色です。肌は荒れていませんし、脱毛部分が特に赤くなっているわけではありません。原因は、日照不足か、栄養不足なのか、ストレスなのかははっきりしません。

一見禿げて居るようには見えませんが・・・

 

後ろからみると・・・

 

横からみると・・・

やはり、禿げ始めています。かわいそう・・・。

冬の飼育下のトガリネズミ ~禿げる(脱毛)その1~

トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミは、冬季に飼育していると多くの個体が禿げて(脱毛)きます(ヒメトガリネズミとエゾトガリネズミについては、これまで冬季間を通して飼育していないため不明)。

一般的に、長期間飼育していると禿げてくる個体が多くなり、寒くなくても起こる現象ではありますが、冬に多く確認されます。体全体に広く禿げ出しますと、そんなに遠くない時期に死亡することが多いのも事実です。

原因は良くわかっていませんが、何れにしても禿げだすと要注意です。中には丸裸のように一端禿げても、再び全身に毛が生えそろった個体もいますので、脱毛=死という訳でもありません。しかし、体調異常のサインであるには変わりありません。写真は、左目の周りが禿げ始めたトウキョウトガリネズミです。

 

謹賀新年(トウキョウトガリネズミ生後6日目です)

新春のお慶びを申し上げます。

昨年の8月にトウキョウトガリネズミの妊娠個体を捕獲してから、1日があっという間に過ぎていくのを繰り返し、気がついたら新年を向かえてしまいました。初めてトウキョウトガリネズミの新生仔を見ることが出来ただけではなく、一時期北海道に生息するトガリネズミ属全4種、計28個体を同時に飼育していた時期もあり、餌替えするだけで、1日3時間かかる日が20日間ほど続いたりして、色々なことがあった年になりました。8月からずっと平均睡眠時間が4時間半というのは今の私の体力では日々やり残しが累積していくだけでした。したがって、HPだけでなく、新しくYouTubeも始めたのですが、全く更新できずにいました。まだ、通常に戻るためにあと1週間くらいかかるのですが、新年を迎えたということで、HPを更新しました。

今回の映像はトウキョウトガリネズミの新生仔6日目の映像です。とにかく、精一杯生きているというのを感じる映像でしたので、元旦には良いかと思いアップしました。

巣から取り出すのに素手では潰してしまいそうでしたので、ヨーグルト用のスプーンで巣から取り出し、体長を計測するためにスケールに置いたところを映像に撮りました。体重と体長の計測をして、撮影しても巣から取り出している時間は4分程度です。どきどきしながら、作業をしていました。

トウキョウトガリネズミの赤ちゃんについては、1月中旬頃から詳しく紹介して行く予定です。

今年もよろしくお願いします。

ダーウィンが来た!の補足2 外見では雌雄の判断は難しい

乳頭が勃起したトウキョウトガリネズミ

 

おかげ様で、多くの知人の方にも見ていただきました。ありがとうございます。そこで、妊娠個体と間違った個体について、いくつかの質問がありました。

特に、体重が減ったことについて、出産後子供を食べたのではないか、大量の糞をしたのではないかというような質問が多かったです。

まず、番組では触れられていませんが、トガリネズミの雌雄は基本的に外見では区別できません。雌雄が判別できる場合は、乳頭が勃起して授乳状態であるときやペニスがでている時など性的特徴が顕著な時しか判別できません。

あの例外的な体重増加個体は、捕獲時期が妊娠個体が捕れる可能性が高い時期の個体でしたので、期待してしまったのです。巣の中だけではなく、体を確認したら妊娠したときに現れる乳房の張りや乳頭が勃起していなかったので、妊娠していないことが判ったのです。

おかげ様で、ダーウィンが来た!「世界最小のミクロ珍獣北海道で虫とバトル」高視聴率だったそうです!と補足です

昨日放映された ダーウィンが来た!「世界最小のミクロ珍獣北海道で虫とバトル」は、おかげさまで高視聴率だったと関係者の方から教えていただきました。多くの方に見ていただけてうれしいです。                 (その時間帯のトップだったとお聞きしました!!)

そこで、番組では伝えきれなかった内容を少しの間、補足していきたいと思います。番組を見ていただいた方はあのシーンの意味を、見ていなくても興味がある方はこのHPの動画ギャラリーなどを見てさらに興味を持っていただければとおもいます。

番組では、草の上を移動するシーンが普通のような感じで映像で流れていましたが、草の上を移動する行動をすることを発見できなかったら、あのような映像を撮ることは出来ませんでした。

2002年以降トウキョウトガリネズミを確実に捕獲出来る場所を見つけたことから、トウキョウトガリネズミの飼育が可能になりました。2回目に捕獲した時に、どこまで土に潜るのかと考え、捕獲した場所から10cmの深さで10cm×40cm程度の土を切り取り、ケースに入れ、その中にトウキョウトガリネズミを放しました。そこで、土に潜るのかと思いきや、なんと草の上に登ったのです。モグラの仲間なので、地中や物の隙間などの利用が主かと思っていたのですが、何と空間利用する時間が結構長いことも判ってきました。

トウキョウトガリネズミの大きさは、実物を見ていないと相当小さいという認識が十分ではありません。その小ささと行動の速さから、野外では草のなどの影にいれば撮影はできません。しかし、草の上のようなオープンなところを移動することが判ったことから、狙って撮影ができるようになったのです。北海道に生息している他の3種のトガリネズミも草に登ることは最近確認されたのですが。トウキョウトガリネズミは他種と比べると利用量が格段に大きいのです。

地上だけを移動する動物だったら、あの移動の速さから言って今回のような番組は製作できませんでした。

 

トウキョウトガリネズミが、ダーウィンが来た!「世界最小のミクロ珍獣北海道で虫とバトル」に出演しました

2021年5月30日 NHKのダーウィンが来た!「世界最小のミクロ珍獣北海道で虫とバトル」で、トウキョウトガリネズミが取り上げられました。

番組を見た後にこのHPにたどり着かれた方や久々の方は、ホーム画面から、ギャラリー(動画)のタブを選択して動画ライブラリの1~4をご覧ください。トウキョウトガリネズミの概要をまとめた動画をアップしてあります。

下記のギャラリーをクリックしてもいけます。ホームページの都合上トウキョウトガリネズミの生態は、1本の動画を3つに分割しています。トガリネズミとネズミの区別については、2020年10月から12月まで開催された北海道大学博物館の「トガリネズミ展」の期間中に会場の解説用に放映していた動画です。ホームページの都合上音声が着いていません。またパネルの参照という部分がありますが、今回は掲載できませんのでご了承ください。

ダーウィンが来た!とこの動画をみて、トウキョウトガリネズミを初めとするトガリネズミ類に興味を持っていただければ幸いです。

ギャラリー

トウキョウトガリネズミが長時間居るつらそうな場所

散形花序の根元に居る場合もあります。それは、複散形花序の時に比べて、とてもつらそうな体勢になります。飼育ケースに入れる植物にもよりますが、ぶら下がる体勢で、結構長時間いることがあります。そのようなつらい体勢にならなくても良いのにと思うのですが・・・。北海道に生息する他の3種では、ヒメトガリネズミで、複散形花序の根元に収まっていた個体が1頭いましたが、他の種では、このようにぶら下がる体勢でじっとしているところは未だ観察されていません。

散形花序の根元は狭いので、どうしてもぶら下がる体勢になってしまします。
折れた茎の先でも、このようにじっとしていて、寝ていると思われることがあります。
どう見ても楽そうには見えませんが、このような体勢で寝ているような時もあります。
このような体勢だと、無理をしている体勢とは一見見えません。でもよく見ると、小さなオオヨモギの葉の上に乗っているだけの様に見えます。決してそんなに安定している場所では無いような気もします。すべては、体重が極端に軽いからなせる技なのかもしれません。

トウキョウトガリネズミがいる場所 複散形花序と散形花序の違い

写真1 複散形花序の根元にいた跡
写真2 散形花序の上で寝ている状況

 

複散形花序の根元にいる場合、グラスの中にいるみたいにしっかりと体を保持してくれる状態になります(写真1)。これに対し散形花序の上にいる場合は、ただ乗っかっているだけになります(写真2)。

風が吹いて草が揺れていても、複散形花序内に居れば、そう簡単に振り落とされることはないですが、散形花序上は不安定です。また、複散形花序の中にいると天敵から見つかりずらいことが判りますが、散形花序の上は明らかに天敵に見つかりやすいと思われます。

散形花序で寝ているのは、飼育下で、風もなく、天敵もいないと安心しているからかもしれません。