トウキョウトガリネズミの探知範囲?(触毛編)

トウキョウトガリネズミに関する質問の中で多いのが、「どのようにして餌を取るのですか」です。それに関する内容は以前のブログにも書いていますが、改めて、観察されていることから整理して順次考えていきたいと思います。

今回は、髭(触毛)について考えてみます。ネコも犬も触毛から色々な情報を収集していることはご存じだと思います。トウキョウトガリネズミも同じく、触毛から情報収集していると考えられます。

トウキョウトガリネズミの触毛の範囲について検証してみたいと思います。

触毛の長さには長短があり、その本数も個体差や損傷なども見られるので正確にはわかりませんが、体より外側にでている長い触毛は、大概の個体では片側だけで10~12本程度が確認できますので、全体では24本程度生えています。その長さは8~10mm程度です。吻の先端近くや顎の下にあるものは短く1mm未満のものから2mm程度まで様々な大きさのものが生えています。その数は、損傷もあるみたいで判別できないものもあるので不明ですが、片側で10本以上は確認できますので、長い触毛と同じかそれ以上あると思います。(小さい触毛についてはまだ確認個体数が少ないので現時点では参考程度です。)

図1のようにトウキョウトガリネズミの触毛による接触して情報収集できる範囲は、触毛が生えている吻の幅約2mmを考慮すると直径18~22mm程度の範囲になります(触毛は湾曲しているのですこし短くなります。)。胴の幅は骨格的には約15mmですが、生きている時は体毛は膨らみますので、それらを考慮すると体の中心線から片側だけで考えますと、胴体の片側の幅と同じだけ胴体より外側に触毛が出ていることになります。

図2は横から見た写真です。通常は、これくらいの範囲を対象にしていると思われます。しかし、触毛は動かすことができ、前方に集中しているときは、図3のように触毛を前方に倒したり、休息しているときは、図4のように体につけたりすることもあります。広範囲の情報を得ようとしたり、特定の方向だけの情報を収集しようとしたりする触毛の動きは、まるでパラボラアンテナを広げたり、しぼったりしているように見えます。

 

図1 トウキョウトガリネズミの触毛による標準探知範囲(個体差は若干あります)
図2 通常の行動時の触毛範囲を横からみた状態
図3 前方の状況を最大限探知しようとしている場合は、触毛を前方に倒している。
図4 安心していたり、探知しようとしていない場合は、触毛は通常よりも体に沿って倒されている。

“トウキョウトガリネズミの探知範囲?(触毛編)” への4件の返信

  1. 初めてコメントします。
    最近トウキョウトガリネズミの魅力にハマり、トウキョウトガリネズミの生態を趣味の範囲で調べるようになりました。
    その上で素朴な疑問なのですが、体重が非常に軽いトガリネズミ達は、強風が吹いたときに吹き飛ばされたりしないのでしょうか。
    素人の質問で恐縮なのですが、お手隙の際にご回答いただけますと幸いです。

    1. まつおさま
      コメントありがとうございます。
      また、トウキョウトガリネズミに興味を持っていただきありがとうございます。

      体重が軽いから強風に飛ばされないかという質問ですが、結論としては、特殊な場合を除いて、通常なら強風が吹いたくらいでは飛ばされないと考えられます。

      竜巻などの人間も飛ばされるような特殊な状態を除けば、以下の3点の状況から普通の強風程度であれば基本的には無いと考えられます。

      1)基本的には植物が全く生えていない場所(吹きさらしの場所)にぽつんといるわけではないので、強風に直接あたる状況にいないこと。
      2)強風で草木が揺れていたら登らないこと。
      3)体は丸く小さくなり、爪もあるので、紙が風に煽られて飛んでいくような状態にはないこと。(風に煽られて飛びやすい形状をしていない)

      もちろん、人間でも飛ばされるような状態の風であれば、隠れている物ごと飛ばされることがあるとは推察されます。しかし、地上を歩いていて強風で飛ばされるという状況は現実的には考えにくいです。
      実際に強風時における行動を十分確認しているわけではありませんが、強風になってきたら、風を利用して飛ぼうという行為はまだ確認したことがありません。むしろ、強風なら草の中から出てきませんので、強風で飛ばされることは無いと思います。
      でも、糸を流して飛んで移動するクモがいるように、もし強風で飛ばされて移動するすべを持っていたとすれば、それはとても面白いですね。そもそも、トウキョウトガリネズミは既成概念によって長い間幻の哺乳類とされていたのですから、思い込みは敵です。したがって、体重が軽いことを利用して、風などを利用していないかという点については、今後機会があれば着目して観察してみます。

      1. お返事ありがとうございます。
        野生のトガリネズミが風に飛ばされて怪我などしてしまっているのであれば非常に気の毒だと思い、心配していたのですが、飛ばされないように工夫していることを教えていただき、安心いたしました。

        本日は実際に生きているトガリネズミを見るべく、多摩動物公園に足を運びました。トウキョウトガリネズミではない種類でしたが、ぴょこぴょことケージ内を動き回るトガリネズミを見ることが出来、感動いたしました。

        いつか、この目でトウキョウトガリネズミを見てみたいものです。

        1. まつおさま

          返信ありがとうございます。
          また、わざわざ多摩動物公園まで見に行っていただきありがとうございます。今多摩動物公園では、越冬個体によるペアリングの準備のため、展示個体の調整をしているので展示されていなかったのだと思います。せっかく、足を運んでいただいたのに見ていただけなくて申し訳ありません。

          諸条件から、多摩動物公園に持ち帰れる個体数が少ないため、展示できる個体が少なくなっているのが現状ですが、いまそれを解消するために努力していますので、もうしばらく見守っていただければと思います。トガリネズミとして展示されていたのはトウキョウトガリネズミでなければ、オオアシトガリネズミだと思います。

          なお、今年の8月末から9月中旬にかけて、北海道の白糠町において昨年同様北海道産トガリネズミ4種の生体展示を行う予定で準備しております。機会があれば、ご検討ください。

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