冬はどうしている?

北海道に生息しているトガリネズミの仲間で、トウキョウトガリネズミ、オオアシトガリネズミは、冬眠しないことは飼育して確認しました。私は、ヒメトガリネズミとエゾトガリネズミは、冬季に野外で飼育をしたことがありませんので、冬眠していないことまだ確認できていません。しかし、両種とも冬眠はしていないと推察されます。ヒメトガリネズミについては、霧多布湿原センターに勤務していた時、2月に建物に中に入ってきた個体を捕まえたことがありますので、冬眠していないと考えます。

さらに、積雪期にどこで、どのように生活しているのかについては、全く判っていません。雪上を歩くオオアシトガリネズミの紹介は以前しましたが、ずっと雪上とは考えられません。したがって、雪の下での行動が主体と考えるのが自然です。

トウキョウトガリネズミの飼育下での行動を見ていますと、雪にトンネルを掘りますが、堅く凍っていると掘れないようです。多分、雪の下では、映像のように枯れ木とか枯れ草などと雪の間にできた空間を、トンネルでつなぎなから活動しているのでないかと推察されます。

トウキョウトガリネズミの巣の作り方 その1

トウキョウトガリネズミ、ヒメトガリネズミ、オオアシトガリネズミは、草で球状の巣を作ります。(エゾトガリネズミについては、あまり飼育していませんのでまだ十分な確認が出来ていませんが、多分同じように作ると思います。)

作り方には、幾通りかの方法があるようです。まず、巣を作りたいと思う場所に、近くのあるときはその場で草を、全身を使って丸めながら引き込みますが、近くにない場合は、まず材料を集めます。

上記の映像は、下図のような配置して撮影しています。撮影時には左側のケースは床材としてチップを敷いてその上にほぐした牧草を約5cm厚で敷き詰めた状態になっていて、餌と水は、撮影しているケースにしか無い状態になっています。映像の前半は、数時間前に現在のケースに入れたばかりの状態です。その後床がアクリル版のままでしたので、流木の下に草を敷いたら、草を集める行動が撮影されました。

通常は草を厚く敷いていることが多いですので、映っているような引き込みは、あまり見かけませんが、必要であれば草を集めてくることが判ります。

赤枠で囲っている配置で撮影している。飼育ケース内の流木などの配置状況は撮影時とは異なる。

トガリネズミを見分ける5(後足長を測る)

背中が丸まっていたら伸ばして測るしかありませんが、実際は死後硬直していたりすると堅くて伸ばすことが困難です。無理矢理伸ばすと脊椎を折ったと感じることもあります。そうすれば、実際より長くなってしまいます。

トガリネズミを見分ける2で「何って適当だ」と気がつかれた方は、測り方で大きく計測値が変わるではないかと気づいた方です。それで、「種の同定(決定)ができるのか?」と思われたと思います。実は哺乳類の頭胴長や全長なんてそんなものなのです。図鑑や図書に書かれている計測値は、あくまでも参考値であって絶対的なものではありません。種によりますが、記載されている数値から多少外れているから違う種というものではないのです。そもそも、種を同定する基準としては、測り方や成長過程で大きく変化する部位は使われていません。

成長過程によって、頭胴長や全長が大きくなっていくため、トウキョウトガリネズミより大きなヒメトガリネズミやエゾトガリネズミやオオアシトガリネズミは、トウキョウトガリネズミの成獣と同じ大きさの時があるということになるからです。したがって、トガリネズミでは、頭胴長や全長が種の判別にとって絶対的な判断基準とはならないのです。参考値です。

しかし、歩き回れる状態になった時には、各種の特徴の大きさにほぼ達しているのが部位が、後足長になります。そして、トウキョウトガリネズミだけは、10mm未満なので、10mm未満であれば、まずトウキョウトガリネズミと考えて良いということになります。

後足長の測り方は、踵から指先まで(爪は入れない)で、実際に地面に付いた状態の形になるようにして測ります。ここでも、あまり強く押しつけると実際より大きくなり、軽く丸まった状態のままですと実際より小さくなるという間違いを起こす危険があります。実際に9.7~10.3mmの範囲の値は、後足長にかける圧力によって差がでるため、慎重に測る必要があります。

後足長の計測方法例

 

トウキョウトガリネズミが罠に落ちにく理由

トウキョウトガリネズミが、罠に落ちにくいので慎重だと書きましたが、オオアシトガリネズミと比べて罠に落ちにくい理由の一つには、後ろ足の使い方にあると思われます(添付動画)。物の角に後足の指を引っかけて、体を支えることができるからです。

オオアシトガリネズミはそのような行動は見られず、後足は前にしか伸びず、自ら飛び込みでいく感じです。でも、ヒメトガリネズミでもトウキョウトガリネズミと同じように後足の指で物の角に引っかけているのを目撃しました。では、なぜ、トウキョウトガリネズミとヒメトガリネズミの捕獲に差がでるかはこれからの課題です。ちなみに、エゾトガリネズミについてはまだ確認できていません。