トウキョウトガリネズミが、草の上で休んでいることはすでに紹介しましたが、入れてある草の状況によっては、草にぶら下がって休息をしている時もあります。人間にもあるように、完全に眠りに落ちた瞬間、体の力が抜けビックとします。トウキョウトガリネズミでも希ですが、ビックとして落ちかけるのを見ることがあります。さらに極めて希ですが、結構な距離を落下することがあります。落ちる時の映像は中々撮れませんが、偶然撮れた映像です。さすが、反応は俊敏で事なきを得ています。
トウキョウトガリネズミの日常 「僕は慎重派!」
トウキョウトガリネズミの夜の行動を観察するために、野外ではセンサーカメラ、飼育下では赤外線カメラを設置します。オオアシトガリネズミとトウキョウトガリネズミでは、種として行動に大きな差が見られます。
飼育下では、両種ともカメラに限らず、新たに何かを入れると必ず確認しにきます。最初はちっと遠巻きしていますが、最後は触って確認します。野外でも基本的には同じで、罠(墜落函)に落ちるのも、このように自分の行動圏に何か変化が起こったようなので、確認しようとする過程で落ちます。
以下の3つの動画は、飼育下のトウキョウトガリネズミが積極的にカメラを確認する状況、トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミが罠に落ちる状況です。いずれも、行動の途中は編集して時間は短縮していません。トウキョウトガリネズミはオオアシトガリネズミと比較すると行動が慎重であることがわかります。
トウキョウトガリネズミが、カメラを確認する映像
トウキョウトガリネズミが罠を確認する状況
オオアシトガリネズミが罠を確認??、落ちる状況
トウキョウトガリネズミの日常 「なぁに?・・・」
餌やりなどの世話で、飼育ケースを開けます。飼育しているケースによって開け方が異なるのでその反応は様々ですが、草茎の中で休んでいる時に、そっ~とあけられた場合、「なぁに?・・・」、という感じで、顔を出します。何回か確認してから安全と判断したのか、草からでてきます。長時間休憩していた時は、まず排泄をすることが多いです。
今北大博物館で展示しているトウキョウトガリネズミ、ヒメトガリネズミ、エゾトガリネズミの飼育ケースには逃亡防止のため、隙間に養生テープが貼ってあります。飼育ケースを開けるためにこの養生テープを剥がすと、「ビリ」と高い音が出ます。どうもこの音は苦手なようで、逃げたり、隠れたり、飛び出てきたり、過敏な素速い反応が見られます。
トウキョウトガリネズミの日常 「おっとと・・・」
草を渡り歩くのが日常のトウキョウトガリネズミ。でも、油断すると草のたわみについて行けないこともある。おっとと・・落ちなくてよかった・・。
トウキョウトガリネズミのあくび
現在行っている北大博物館の「北海道のトガリネズミ」の展示では、12時から13時かけて餌やりなどの世話を行うので、この時間帯は比較的簡単にトウキョウトガリネズミを含む4種の姿を見ることができます。
その時に見られるのは、餌を食べたり、糞をしたり、ケースの中を移動したりする行動になります。常に見られていることもあり、ゆったりとした姿を見せることはありません。常にせわしく動いているという印象を受けると思います。しかし、飼育をしていると、実は意外とリラックスしたゆったりとした行動も見られることがあります。その一つに目覚めた直後あくびがあげられます。こんなに口が開くのかということと、歯茎まで見られるので少し驚きます。通常、餌を食べている行動を見ても、歯や歯茎まで見えることはありません。トガリネズミの歯の先が赤いという特徴を生きたまま確認できる希な場面です。
常時飼育している私でも、あくびをする場面をそうそう見られる訳でもありませんし、写真や映像が撮れるような場所やタイミングであくびをしてくれることもなかなかありません。偶然、最近撮れたアップの映像が以下の2つです。皆さんが見ていないところでこんな行動もしています。
トウキョウトガリネズミの冬毛
トウキョウトガリネズミは、10月に入ると冬毛に徐々に変わり始めます。
腹面が夏毛より明らかに白くなり、背面は茶から黒ぽっくなります。
換毛は尻部から始まり、頭部に向かって広がっていきます。室内で飼育していると寒くないので写真のようなはっきりとした冬毛にならないことが多いですが、気温が下がると換毛は行われます。展示中に始まるかもしれませんので、体毛の変化についても注意深く見てください。境目は、意外とはっきりわかります。
オオアシトガリネズミの寝姿
トウキョウトガリネズミの寝姿(2)
トウキョウトガリネズミの寝姿(1)の写真から、イヌやネコが丸まって寝ている様子と基本的に変わらないということがわかります。実はあのようなところに寝るのは暑いからです。トウキョウトガリネズミは北海道に生息するトガリネズミ4種の中でも特に暑さに弱く、気温(室温)が25℃を超えると草の中から出てきて、草の上や途中で暑さをしのいでいると思われる行動をよくとります。下の写真の左側の白いものは保冷剤を入れた袋です。この夏はこのように保冷剤の近くで涼んでいました。
しかし、下のような寝姿はこれまで10年近く飼育していますが、今年初めて見ました。最初死んでいると思いましたが、よく見るとお腹が動いていたのでびっくりしました。すべての個体が、こんな寝方をしているとはとても思えません。
飼育して良くみられる寝姿は、以下のような状態です。ぶら下がっていたり、草の間にはまっていたりします。ぶら下がっているのに本当に寝ているのかと思いますが、時々熟睡してしまい草から落ちることがあります。観察していると目の前で本当に油断して前足の力抜けた感じで落ちるのです。そして、慌てた様子で移動します。その行動はいつもの草から落ちる動作を明らかに異なります。いずれにしても器用な寝方をしているものだと関心します。
トウキョウトガリネズミの寝姿(1)
北海道のトガリネズミ展を北大博物館で開催中
10月12日から11月11日まで、北海道大学博物館で「北海道のトガリネズミ展」を開催しています。
https://www.museum.hokudai.ac.jp/display/special/13911/
昨年のトウキョウトガリネズミ展につづき、北大低温研の大舘先生と共同で今年は北海道に生息するトガリネズミ4種の生体展示を行っています。トガリネズミ4種の生体展示は、国内初(もちろん世界初のはず)の展示です。
これまで4種の展示がされなかったのは、トウキョウトガリネズミが近年まで生きて捕獲することが困難であったこと、また、同時に4種を確実に捕獲し、長期間飼育するという技術も十分確立していなかったからです。
今回は昨年のトウキョウトガリネズミ展より、見てもらえるチャンスが増えるように展示にも工夫をしましたので、ぜひ見に来てください。
展示期間中は、大舘先生や私が解説していることもありますが、常にいるわけでないので、見所や裏話などを紹介していきますので、参考にして見ていただければと思います。