トウキョウトガリネズミの時間と人間の時間 その1

「トウキョウトガリネズミは、何時間食べないと死ぬか」いう話の続きです。多くの人によく聞かれる内容です。「2時間食べないと死ぬというのは本当ですか?」。正直、私はこの質問は好きではありません。それは、「体が小さいから、2時間食べないと死ぬのは当然」という回答を期待されていると感じるからです。ただし、この2時間説は、どの種を対象としたものか定かではありませんが、トウキョウトガリネズミを観察してと言うわけではありません。なぜなら、トウキョウトガリネズミが極めて希にしか捕獲されない時から言われていたからです。種によっても異なる可能性もあるのですが、まずは、トウキョウトガリネズミから考えることにします。

これまでは、捕獲結果から2時間で即餓死する可能性は低く、3時間から5時間くらいではないかと推察されるという話でした。少し視点を変えて、人間時間とトウキョウトガリネズミ時間(以下トガリ時間)について考えて見ましょう。

まず、人間の1時間がトガリネズミに取って何時間に相当するのかを考えてみたいと思います。単純に寿命の総時間数での対比とします。人間は50年、トウキョウトガリネズミは、500日とします。人間は人生50年と言われていた時代があり、その頃は医療も発達していませんでしたので、これを自然状態における寿命とします。トウキョウトガリネズミは、飼育下における捕獲してからの寿命の平均値です。(端数を切り捨てています。)

そうすると、人間が死ぬまでの総時間数は50年×365日×24時間=438,000時間、トウキョウトガリネズミが死ぬまでの総時間数は500日×24時間=12,000時間となります。人間の1時間:トガリの1時間=人間の総時間数:トガリの総時間数ですから、トガリ時間は、12,000÷438,000=0.0273・・・になります。人間の1時間(60分)はトガリ時間1.62分(60分×0.027)相当になります。人間にとっての1時間は、トウキョウトガリネズミにとって37時間相当になります。すなわち人間時間での1時間は、トガリ時間37時間=1.54日、2時間は74時間=3.08日、3時間は、111時間=.4.62日、4時間は148時間=6.16日、5時間は185時間=7.7日となります。

人間が飲まず食わずの場合のデッドラインは人間時間で3日間(72時間)と言われていますので、生理機能が全く同じであれば、トガリ時間で72時間は、人間時間の2時間弱となり、2時間食べないと死ぬという説は、あながち的外れでは無い感じに思えます。

しかし、人間時間の1時間弱で死亡するなら、2時間間隔で行っている捕獲調査の生存個体回収率はもっと低くなるはずです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA