オオアシトガリネズミの貯食行動(1)

 現在の季節は初冬ですが、展示している場所は暖房が入っているのでトガリネズミしてみれば夏から秋みたいな気温です。トウキョウトガリネズミもオオアシトガリネズミも冬眠しません。冬季にどのように採餌しているかは、現時点ではよくわかっていませんが、寒くなると飼育下のオオアシトガリネズミには貯食行動と考えられる特徴的な行動が見られます。

 映像は、気温が5度程度が数日続いたある日、新しい餌を与えたらオオアシトガリネズミが、立て続けにゆでたミルワームを草の中に引き込む始めた様子を撮影したものです。2日ほどこのような目立った行動をしていました。1日目は、9gの餌が15分ほどで3gを残すだけになったところで引き込むのをやめました。

 

本日展示の準備をしました

展示状況1 本日、北大総合博物館は休館日でしたが、トガリネズミ展の準備を飼育支援員としてトガリネズミの世話してくれる北大の学生さん達と一緒に行いました。

 展示期間中、飼育支援員が、トガリネズミの日々の様子やごはんタイムなどの情報をTwitterで発信していますので、そちらも見てください。詳しくは下記をご覧ください。https://www.museum.hokudai.ac.jp/display/special/15611/

 展示されている生体は、トウキョウトガリネズミ、オオアシトガリネズミ、エゾカアカネズミ、エゾヤチネズミの4種です。今回は、大舘先生が来年の干支であるネズミと異なる点にこだわって解説を作成されましたので、それも見どころです。大舘先生は、ウイークデーを中心に、私は土日を中心に昼から1~2時間程度解説員として参加する予定です。

 今回の展示では、昨年まで流していたトウキョウトガリネズミの映像をリニューアルしました。留学生の飼育支援員が、前足を動かす仕草を気に入ってくれたみたいです。

 

トガリネズミ展を11月12日から北大総合博物館で開催します

 11月12日(火)から北海道大学総合博物館1階 北極域研究センター展示室でトガリネズミ展を開催することになりました。私が捕獲した生きたトウキョウトガリネズミ(♂)も展示しますので、興味のある方は是非見に来てください。

 生きたトウキョウトガリネズミを北大総合博物館で展示するのは今回で3年連続となりました。一昨年はとにかく生きたトウキョウトガリネズミを多くの人に見てもらうことを、去年は北海道に生息するトガリネズミ属全4種を見てもらうことを(国内で初の試み)、今回は来年がネズミ年ということもあり、トガリネズミとネズミが大きく違うことを知ってもらうことを目的として急遽開催することになりました。

 今回も北海道大学低温科学研究所の大舘智志先生の要請を受けて協力させてもらっています。これから、開催期間中見どころを随時紹介していきますのでよろしくお願いします。

 生きたトウキョウトガリネズミを一般の方が見ることができるのは、現時点では世界でも東京の多摩動物公園(通年)と北大博物館(12月15日までの予定)の2カ所しかありません。この機会に世界最小級の哺乳類を大きさを体感してください。

 

 小さなちいさな哺乳類 トガリネズミ展

ー私たちはけっして「鼠」の仲間ではありませんー

 開催期間 2019年11月12日(火)~12月15日(日)

 場所   北海道大学総合博物館1階 北極域研究センター展示室

 開館時間 10:00~17:00 月曜休館(祝日の場合は翌日休暇)

 入場無料 

 

オオアシトガリネズミの床替え

 久々のブログの更新になってしまいました。色々と忙しく、日々トガリネズミ5頭の餌やりだけが精一杯の日々が続いていましたが、やっと今日、野外で飼育しているオオアシトガリネズミの飼育ケース内を掃除し、床材などをすべて入れ替えました。約3ヶ月間、不定期に汚れがめった部分だけを交換していたので、全体的にはかなり汚れていました。体重は、12月の計測時とほとんど変化なく、+0.1gの10.1gでしたので、寒さによる影響はほとんど見られず、無事に冬を越せたみたいです。

 飼育ケースには、ケースを連結するために塩ビ管を1~2本差し込んでいます。連結していない部分は蓋をして、巣として利用することを期待しているのですが、未だに明らかな巣として利用したことはなく、一時的な避難場所兼糞場となっています。餌を交換したり、床替えなどするときは、塩ビ管に良く移動します。中は結構汚れているのですが、平気みたいです。オオアシトガリネズミは、他の種より大きいので糞尿の量も多いのですが、糞場を決めず、もようした時にどこでもするという感じです。したがって、餌箱の中も糞尿まみれ(当然まだ食べれらる餌も)ですが、それでも、どうも平気みたいです。


トガリネズミがカメラ撮影が苦手な訳

12月2日まで行っていたトガリネズミ展で、トガリネズミの撮影を禁止にさせてもらっていました。実は、トウキョウトガリネズミやオオアシトガリネズミなどがハンティングなどで出す音(主として周波数帯 5~10kHz)とカメラがピンセットを合わせるために音がほぼ同じなのです。したがって、多くの人に撮影されると大変なストレスをトガリネズミたちに与えることになるからです。トガリネズミが出す音がどのように使われているかは、現在複数の人が研究中で詳細はこれからですが、いずれにしてもカメラの出す音波はとても苦手なことは確かのようです。

トウキョウトガリネズミがコオロギを捕獲する際に出している主な周波数帯 5~10kHz

カメラ(EOS80D)の出す周波数帯5~10kHz

トウキョウトガリネズミが罠に落ちにく理由

トウキョウトガリネズミが、罠に落ちにくいので慎重だと書きましたが、オオアシトガリネズミと比べて罠に落ちにくい理由の一つには、後ろ足の使い方にあると思われます(添付動画)。物の角に後足の指を引っかけて、体を支えることができるからです。

オオアシトガリネズミはそのような行動は見られず、後足は前にしか伸びず、自ら飛び込みでいく感じです。でも、ヒメトガリネズミでもトウキョウトガリネズミと同じように後足の指で物の角に引っかけているのを目撃しました。では、なぜ、トウキョウトガリネズミとヒメトガリネズミの捕獲に差がでるかはこれからの課題です。ちなみに、エゾトガリネズミについてはまだ確認できていません。

 

トウキョウトガリネズミの日常     「僕は慎重派!」

トウキョウトガリネズミの夜の行動を観察するために、野外ではセンサーカメラ、飼育下では赤外線カメラを設置します。オオアシトガリネズミとトウキョウトガリネズミでは、種として行動に大きな差が見られます。

飼育下では、両種ともカメラに限らず、新たに何かを入れると必ず確認しにきます。最初はちっと遠巻きしていますが、最後は触って確認します。野外でも基本的には同じで、罠(墜落函)に落ちるのも、このように自分の行動圏に何か変化が起こったようなので、確認しようとする過程で落ちます。

以下の3つの動画は、飼育下のトウキョウトガリネズミが積極的にカメラを確認する状況、トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミが罠に落ちる状況です。いずれも、行動の途中は編集して時間は短縮していません。トウキョウトガリネズミはオオアシトガリネズミと比較すると行動が慎重であることがわかります。

トウキョウトガリネズミが、カメラを確認する映像

トウキョウトガリネズミが罠を確認する状況

オオアシトガリネズミが罠を確認??、落ちる状況

オオアシトガリネズミの寝姿

トウキョウトガリネズミの寝姿の大胆さには結構びっくりしますが、オオアシトガリネズミの寝姿も負けず劣らずびっくりします。というようり結構豪快です。通常は以下のような感じですが・・・。

しかし、以下の写真みたいに、死んだようにへそ天状態の時もあります。いずれにしても暑い時に、このように草から出てきて寝ていることが多いです。暑いからこのような寝方をするのでしょう。写真では判りにくいかもしれませんが、本当に死んでいません、だた寝ているだけです・・。

北海道のトガリネズミ展を北大博物館で開催中

10月12日から11月11日まで、北海道大学博物館で「北海道のトガリネズミ展」を開催しています。

https://www.museum.hokudai.ac.jp/display/special/13911/

 

昨年のトウキョウトガリネズミ展につづき、北大低温研の大舘先生と共同で今年は北海道に生息するトガリネズミ4種の生体展示を行っています。トガリネズミ4種の生体展示は、国内初(もちろん世界初のはず)の展示です。

これまで4種の展示がされなかったのは、トウキョウトガリネズミが近年まで生きて捕獲することが困難であったこと、また、同時に4種を確実に捕獲し、長期間飼育するという技術も十分確立していなかったからです。

今回は昨年のトウキョウトガリネズミ展より、見てもらえるチャンスが増えるように展示にも工夫をしましたので、ぜひ見に来てください。

展示期間中は、大舘先生や私が解説していることもありますが、常にいるわけでないので、見所や裏話などを紹介していきますので、参考にして見ていただければと思います。