雪に穴を掘るトウキョウトガリネズミ

雪に対する行動を調べ始めて、1ヶ月が経ちました。今年の冬は近年には無い暖冬で、1月末から2月上旬だというのに、外気温とほぼ同じ環境の飼育ケースに入れた雪の大半が溶けて無くなり、2回も雪を入れ直しました。

初めの頃は、勢い良く雪を飛ばしながら穴を掘る場面を良く見ました。体が小さいのに、とても力強さを感じました。それを録画したいと何回かチャレンジしたのですが、なかなか新雪のような状態にならないこともあり、撮れません。やっと、1秒ほど撮れました。最初見たほど勢いよく激しくはありませんが、それなりの堅雪でもこれくらい雪を飛ばせるという、力強さを感じてもらえればと思います。

なお、移動しているスピードは編集されていません。トウキョウトガリネズミの移動速度は相変わらず高速で、追うのが大変です。

 

トガリネズミとネズミの区別4(トガリネズミの歩く姿)

前回、トウキョウトガリネズミの飼育下の雪上の映像をアップしましたが、これまで完全な自然状態下でトウキョウトガリネズミを観察できたことはありません。とにかく小さくて、突然出会い、写真を撮るなって、まだ十分な知見を得られていないので、奇跡に近いと思っています。

これに対して、オオアシトガリネズミには結構出会います。「見たよ」と教えてくれる方は、夏よりも冬の方が多い感じを受けます。特に「スキー場で見た」という話が多い気がします。雪上だと黒くて、ちょこまか、ちょこまかと慌ただしく動く感じに見えるので、目立つのだと思います。

前にトガリネズミは「尻尾をあげて走っている感じ」ということを書きましたが、映像を見ていただくの方が判ると思います。オオアシトガリネズミの映像が今一つですが、トウキョウトガリネズミと同じぐらい尾を上げています。

オオアシトガリネズミは、スキー場のある山地だけでなく、住宅街でも畑のあるところなら生息しているので、散歩することがあったら気をつけて時々雪面を見てください。出会えるかもしれません。

平ら場所を急いで移動する時は、尾を上げていることが多い

雪上のトウキョウトガリネズミ

今、トウキョウトガリネズミが雪がある時期にどのような行動をするのかについて調べています。

飼育ケースには雪がない部分もありますが、積極的に雪のある場所に来て、雪に穴堀ったり、木や草の隙間を利用して、トンネルを作っています。

トガリネズミとネズミ区別3 前足と歯(頭骨)

北海道でネズミみたいな死体を結構見かけることがありますが、人家周辺以外ではオオアシトガリネズミが圧倒的に多いようです。

死体によるトガリネズミとネズミの区別は、その場で前足の指の数を確認すれば判ります。トガリネズミは5本で、ネズミは4本です(左右は関係ありません。手元にあった写真の都合です。あと、くれぐれも、素手で触らないように・・)

また、死体が損傷していた場合、頭骨があれば歯の生え方でも区別することができます。切歯から臼歯間までの歯が無いのがネズミで、すべての歯が並んでいるのがトガリネズミです。頭骨の写真を比べると、鼻先(吻)にあたる頭骨の長さと形が異なることが、トガリネズミとネズミの吻の形状の差につながっていることが判ります。

前足の指の本数、または歯の生え方のどちらか一方でも確認できれば間違いありませんが、機会があれば両方確認してみてください。

トガリネズミとネズミの区別2(野外で見かけた時の判断)

前回の続きです。まず、ここでは、北海道での話が前提ということで話を進めます。(北海道以外も含めると注釈を多数入れる必要があるため、わかりにくくなりますので・・)

皆さんは、トガリネズミとネズミの区別をどのように判断されましたか?野外で、動いているのを見たとき、または死体に触らず、外見的に判断する場合から考えます。結論から言えば、「鼻先が細く尖っていて、尾が頭胴長の半分より少し長く、尾を上げながら走る、全体的に黒っぽい」感じがトガリネズミと言うことになります。

お気づきなったと思いますが、まず顔つきが違います。トガリネズミは鼻先が尖っていて、ネズミはトガリネズミに比べると丸い鼻先になります。

また、トガリネズミは、尾の長さが概ね頭胴長(体全体を伸ばした状態で、鼻先から尾の付け根までの間)の1/2以上ありますが、ネズミには、尾が頭胴長と同じかそれ以上あるものと、頭胴長の1/2以下の2つのタイプがあります。更に言えば、トガリネズミはネズミと比べて体色が全体的に黒く感じます(トガリネズミとネズミの比較1を参照)。

上の写真の左下の秤の写真を見てもらえると頭胴長と尾の比率の感じが解ると思います。しかし、他の写真を見ると止まっている状態では、エゾアカネズミもエゾヤチネズミも頭胴長同じかそれ以上という感じに見えます。すなわち、移動している(走っている)状態とジッとしている状態では、頭胴長と尾の比率の感じ方(見え方)が異なります。また、トガリネズミは基本的には尾をあげて移動しますが、ネズミは尾は地面につけていることが多いのが特徴です(ネズミの足跡には尾の跡がつくのが特徴です)。

実際に野外で動いているトガリネズミか、ネズミに遭遇した場合、鼻先を確認できるような状態は意外とありません。大概は、走っている場合が多いので、後ろ姿など顔が見えな状態に遭遇することになります。したがって、「小さくて、(鼻先が細く尖っていて、)尾が頭胴長の半分より少し長く、尾を上げながら走る、全体的に黒っぽい」というイメージが持てれば、たとえ鼻先が確認できなくても、今、目の前を通過したのはトガリネズミであったのか、ネズミであったのかがわかります。(続く)

トガリネズミとネズミの区別 1

時々、トガリネズミに関しての問い合わせもいただきます。その多くは、「これはトウキョウトガリネズミではないか」と「トガリネズミなのかネズミなのか」の2つに集約されます。また今年の干支が「鼠」なので、例年になくトガリネズミが話題にされる時期なので、問い合わせが多くなります。関心を持ってもらえるのでうれしいです。

昨年12月の講演会に限らず、トガリネズミに関する講演では、必ずトガリネズミはモグラの仲間で、ネズミとは全く別ものであることについて触れますが、あまり時間を割くこともできないので、十分理解してもらえない状況で先に進んでしまうことも多いので、今回何回かに分けて説明してみたいと思います。

まず、分類学的にどうこうと言う前に、姿形でトガリネズミとネズミを自身をもって区別できるようになることが重要です。以下の2枚の比較写真を見て、どこが区別のポイントかをまず考えて見てください。まず区別のポイントがどこかを自分で考えることが、野外で瞬時に区別できる能力アップにつながります。

北海道のこの時期、「雪の上をネズミみたいな生き物が歩いているのを見た」という話が時々あります。それが解るようになります。回答は次回で。

あくび(スロー映像)が撮れました

やっとトウキョウトガリネズミのあくびのスロー映像が撮れました。飼育しているとあくびをたまに見ることがありますが、撮影するとなるとなかなか撮れないものです。

そもそもあくびは、哺乳類だけではなく爬虫類や鳥類でも起こることが知られています。人間があくびする時は、眠たいとき、疲れているとき、退屈なとき、極度の緊張状態のとき、寝起きに起こるとされています。その理由は、酸欠になっているからとか、脳の温度を下げるためとか言われていますが、解明されたとはまでは言えない状況にあります。

トウキョウトガリネズミに関しては、寝起きやじっと同じ体勢でいて、活発に活動をし始めるときに見られます。脳の温度を下げるという理由の一つとして、人間は体温より高い環境ではあくびをしないことがあげられています。しかし、トウキョウトガリネズミは、そもそも基本的に自分の体温より高い気温なる環境に生息していませんし、25℃を超えると口でハアハアと息をする状況もみられ、35℃を超えると死んでしまうこともあるので、そう簡単に同じ状況とは思えません(注1)。今回の映像は気温0℃から5℃の間で、寝ていた後にあくびをしたことから考えると、脳の温度を下げるほど温度が上がっていたのかが疑問になるところです。体が小さくて、寒いところに生息していることから基礎代謝量を高い状態で維持する必要があることを考えると、そう簡単に脳の温度を下げるような状況を体内に作り出すのは、戦略的に不利な印象を受けます。そもそもあくびの理由が、すべて種で同じなのかも検証されていないので、全く別の理由があるのかもしれません。

とにかく、あくびをみるとホットします。なぜなら、あくびを見るときは今のところ常に寝起きの状況なので、緊張状態とは思えないからです。それは、飼育下でも少しでもストレスが少ない状態であって欲しいという私の勝手な思いかもしれませんが・・。

注)トウキョウトガリネズミの体温はサーモグラフィーで測定すると最低36℃程度はある。また、飼育下で夏場に誤って35℃~38℃になった時に死亡した事例がある。

あけまして おめでとうございます

 あけまして おめでとうございます 今年もよろしくお願いします。

今年こそ、トウキョウトガリネズミの出産を見たいと強く願って研究をしますので、引き続き、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いします。

現在も1頭のトウキョウトガリネズミが、外気温とほぼ同じ状況で元気で活動しています。野外では、本来草は枯れ、雪に埋もれているため、草の上には登ることはないと考えられます。しかし、雪が無い飼育小屋では、私が餌やりに行くと出てきて、必ず草の上に登り、新しい餌が入れられるまで待っています。学習能力の高さを実感させられます。これまでの最低気温はー9℃でしたが、元気に活動しています。

今朝の状況

現在の飼育小屋の状況

北大総合博物館の展示は本日終了しましが、霧多布湿原センターのパネル展は1月1日まで行っています。

12月15日の霧多布湿原センターにおける講演会の様子

お陰様で、北大総合博物館のトガリネズミとネズミの生体展示が本日で終了しました。多数の方々にお越しいだだきありがとうございました。また、12月15日の北海道厚岸郡浜中町霧多布湿原センターにおける講演会と12月21日の北大総合博物館のセミナーにも多くの方々に参加していただき、無事終了することができました。ありがとうございました。改めて、札幌においてはトガリネズミ達の世話をしていただきました学生さん達と常に見守っていただきました北大博物館の方々、浜中町では、役場職員および霧多布湿原センター職員の方々に御礼申し上げます。なお、霧多布湿原センターでは1月1日までトウキョウトガリネズミのパネル展は行っているので、機会があれば見に行っていただければと思います。

12月21日の北大総合博物館のセミナーの様子

展示も3年目になると脱走事件など色々とハプニングが起こりました。特にトウキョウトガリネズミが死亡したことは大変申し訳ありませんでした。しかし、死亡を知らずに見にみていただいた方からは、死亡を知っても「来年もまた見に来るから楽しみしている・・」と温かい言葉を多数いただきました。機会があればまた生体展示を続けてみたいと思います。

これから、何回かはこの2つの講演会でお話した内容についてご紹介したいと思います。

トウキョウトガリネズミのひげとペットボトル

 トウキョウトガリネズミのひげには長短ありますが、吻の先端から根元方向に長くなり、最長で約10mmになります。幅が約3mmありますので、体の中心から直径約23mmの範囲(4.15㎠)をひげで感知していると考えられます。体の幅が約10mm強ありますので、体側から約5mmの範囲(体幅の倍)を探知範囲としていると考えらます。

 実はこの範囲、ペットボトルの飲み口とほぼ同じ直径なのです。