北大博物館におけるトガリネズミ展が無事終了しました。

北大博物館で10月12日から開催していた「北海道のトガリネズミ」展が、12月2日に、当初より3週間会期を延長して無事終了しました。終了翌日から出張続きでご報告できず失礼しました。

たくさんの方に来ていただきありがとうございました。複数回見に来ていただいた方も結構いたようで、本当にありがとうございました。

無事、国内初、いや世界初の北海道産のトガリネズミ4種の生体展示を終えることができたのも、ひとえに、飼育を担当してくれたボランティアの学生さんたちのおかげです。改めてお礼を申し上げます。ボランティアさんの協力がなければ、到底維持できない展示でした。

見に来ていただいた方々とは、いつかまたどこかで、生きたトガリネズミたちとお会いできることを楽しみしております。それまでは、このサイトをよろしくお願いします。

展示終了後、大舘先生(右)と

 

 

 

トウキョウトガリネズミも木から落ちる?

トウキョウトガリネズミが、草の上で休んでいることはすでに紹介しましたが、入れてある草の状況によっては、草にぶら下がって休息をしている時もあります。人間にもあるように、完全に眠りに落ちた瞬間、体の力が抜けビックとします。トウキョウトガリネズミでも希ですが、ビックとして落ちかけるのを見ることがあります。さらに極めて希ですが、結構な距離を落下することがあります。落ちる時の映像は中々撮れませんが、偶然撮れた映像です。さすが、反応は俊敏で事なきを得ています。

トウキョウトガリネズミの日常     「僕は慎重派!」

トウキョウトガリネズミの夜の行動を観察するために、野外ではセンサーカメラ、飼育下では赤外線カメラを設置します。オオアシトガリネズミとトウキョウトガリネズミでは、種として行動に大きな差が見られます。

飼育下では、両種ともカメラに限らず、新たに何かを入れると必ず確認しにきます。最初はちっと遠巻きしていますが、最後は触って確認します。野外でも基本的には同じで、罠(墜落函)に落ちるのも、このように自分の行動圏に何か変化が起こったようなので、確認しようとする過程で落ちます。

以下の3つの動画は、飼育下のトウキョウトガリネズミが積極的にカメラを確認する状況、トウキョウトガリネズミとオオアシトガリネズミが罠に落ちる状況です。いずれも、行動の途中は編集して時間は短縮していません。トウキョウトガリネズミはオオアシトガリネズミと比較すると行動が慎重であることがわかります。

トウキョウトガリネズミが、カメラを確認する映像

トウキョウトガリネズミが罠を確認する状況

オオアシトガリネズミが罠を確認??、落ちる状況

トウキョウトガリネズミの日常     「なぁに?・・・」

餌やりなどの世話で、飼育ケースを開けます。飼育しているケースによって開け方が異なるのでその反応は様々ですが、草茎の中で休んでいる時に、そっ~とあけられた場合、「なぁに?・・・」、という感じで、顔を出します。何回か確認してから安全と判断したのか、草からでてきます。長時間休憩していた時は、まず排泄をすることが多いです。

今北大博物館で展示しているトウキョウトガリネズミ、ヒメトガリネズミ、エゾトガリネズミの飼育ケースには逃亡防止のため、隙間に養生テープが貼ってあります。飼育ケースを開けるためにこの養生テープを剥がすと、「ビリ」と高い音が出ます。どうもこの音は苦手なようで、逃げたり、隠れたり、飛び出てきたり、過敏な素速い反応が見られます。

トウキョウトガリネズミのあくび

現在行っている北大博物館の「北海道のトガリネズミ」の展示では、12時から13時かけて餌やりなどの世話を行うので、この時間帯は比較的簡単にトウキョウトガリネズミを含む4種の姿を見ることができます。

その時に見られるのは、餌を食べたり、糞をしたり、ケースの中を移動したりする行動になります。常に見られていることもあり、ゆったりとした姿を見せることはありません。常にせわしく動いているという印象を受けると思います。しかし、飼育をしていると、実は意外とリラックスしたゆったりとした行動も見られることがあります。その一つに目覚めた直後あくびがあげられます。こんなに口が開くのかということと、歯茎まで見られるので少し驚きます。通常、餌を食べている行動を見ても、歯や歯茎まで見えることはありません。トガリネズミの歯の先が赤いという特徴を生きたまま確認できる希な場面です。

常時飼育している私でも、あくびをする場面をそうそう見られる訳でもありませんし、写真や映像が撮れるような場所やタイミングであくびをしてくれることもなかなかありません。偶然、最近撮れたアップの映像が以下の2つです。皆さんが見ていないところでこんな行動もしています。

 

 

トウキョウトガリネズミの冬毛

トウキョウトガリネズミは、10月に入ると冬毛に徐々に変わり始めます。

トウキョウトガリネズミの冬毛

腹面が夏毛より明らかに白くなり、背面は茶から黒ぽっくなります。

トウキョウトガリネズミの夏毛

換毛は尻部から始まり、頭部に向かって広がっていきます。室内で飼育していると寒くないので写真のようなはっきりとした冬毛にならないことが多いですが、気温が下がると換毛は行われます。展示中に始まるかもしれませんので、体毛の変化についても注意深く見てください。境目は、意外とはっきりわかります。

換毛(黒い部分)が尻部から始まっている
黒い部分は尻部から背中に向かって広がっている
黒い部分が首部まで広がっている

オオアシトガリネズミの寝姿

トウキョウトガリネズミの寝姿の大胆さには結構びっくりしますが、オオアシトガリネズミの寝姿も負けず劣らずびっくりします。というようり結構豪快です。通常は以下のような感じですが・・・。

しかし、以下の写真みたいに、死んだようにへそ天状態の時もあります。いずれにしても暑い時に、このように草から出てきて寝ていることが多いです。暑いからこのような寝方をするのでしょう。写真では判りにくいかもしれませんが、本当に死んでいません、だた寝ているだけです・・。

トウキョウトガリネズミの寝姿(2)

トウキョウトガリネズミの寝姿(1)の写真から、イヌやネコが丸まって寝ている様子と基本的に変わらないということがわかります。実はあのようなところに寝るのは暑いからです。トウキョウトガリネズミは北海道に生息するトガリネズミ4種の中でも特に暑さに弱く、気温(室温)が25℃を超えると草の中から出てきて、草の上や途中で暑さをしのいでいると思われる行動をよくとります。下の写真の左側の白いものは保冷剤を入れた袋です。この夏はこのように保冷剤の近くで涼んでいました。

 

 

しかし、下のような寝姿はこれまで10年近く飼育していますが、今年初めて見ました。最初死んでいると思いましたが、よく見るとお腹が動いていたのでびっくりしました。すべての個体が、こんな寝方をしているとはとても思えません。

飼育して良くみられる寝姿は、以下のような状態です。ぶら下がっていたり、草の間にはまっていたりします。ぶら下がっているのに本当に寝ているのかと思いますが、時々熟睡してしまい草から落ちることがあります。観察していると目の前で本当に油断して前足の力抜けた感じで落ちるのです。そして、慌てた様子で移動します。その行動はいつもの草から落ちる動作を明らかに異なります。いずれにしても器用な寝方をしているものだと関心します。

トウキョウトガリネズミの寝姿(1)

現在北大博物館で行っている北海道のトガリネズミ展では、なるべく多くの人に生きたトガリネズミの姿を見てもらえるよう、昨年よりいくつかの工夫を加えています。しかし、それでもやはり見ていただけない方も多くいらっしゃいます。見られない多くの方は、「寝ているのかね・・。残念ね。」と言われます。

では、どんな風に寝ているかというと、実際は草の中などで隠れて寝ているのでほとんどはわかりませんが、観察していると寝ている姿が見られることがあります。まずは、代表的な寝姿を見てください。細かい解説は寝姿(2)で・・。