北海道産トガリネズミ4種の大きさ比較の固定ページを更新しました

トガリネズミの基礎情報「北海道産トガリネズミ4種の大きさの比較」のページを動画に変更しました。トガリネズミの基礎情報の固定ページの情報が古くなっていたり、間違いが見つかったりしていますので、修正及び更新をこれから随時行っていきます。まずは、「北海道産トガリネズミ4種の大きさの比較」からです。

トガリネズミを飼育していると個体だけではなく、種としての性格というのか行動特性があるように見受けられます。この動画は、それを比較的表している内容になっていると思いますので、「トガリネズミの基礎情報>北海道産トガリネズミ4種の大きさの比較(動画)」をご覧ください。

あと、トガリネズミ形目は現在真無盲腸目に変わりましたが、これからこのページの更新を行いますので、少々おまちください。なお、トガリネズミ目をトガリネズミ目に修正してあります。環境省のレッドデータリストなどでは、トガリネズミ目と記載されていましたので、それに準拠していたのですが、その他の図書はトガリネズミ形目となっていましたので、環境省の野生生物課に確認をしたことろ、どうも誤植だったようです。「なぜ型になっているか分からない」という回答でした。

トウキョウトガリネズミの探知範囲?(触毛編)

トウキョウトガリネズミに関する質問の中で多いのが、「どのようにして餌を取るのですか」です。それに関する内容は以前のブログにも書いていますが、改めて、観察されていることから整理して順次考えていきたいと思います。

今回は、髭(触毛)について考えてみます。ネコも犬も触毛から色々な情報を収集していることはご存じだと思います。トウキョウトガリネズミも同じく、触毛から情報収集していると考えられます。

トウキョウトガリネズミの触毛の範囲について検証してみたいと思います。

触毛の長さには長短があり、その本数も個体差や損傷なども見られるので正確にはわかりませんが、体より外側にでている長い触毛は、大概の個体では片側だけで10~12本程度が確認できますので、全体では24本程度生えています。その長さは8~10mm程度です。吻の先端近くや顎の下にあるものは短く1mm未満のものから2mm程度まで様々な大きさのものが生えています。その数は、損傷もあるみたいで判別できないものもあるので不明ですが、片側で10本以上は確認できますので、長い触毛と同じかそれ以上あると思います。(小さい触毛についてはまだ確認個体数が少ないので現時点では参考程度です。)

図1のようにトウキョウトガリネズミの触毛による接触して情報収集できる範囲は、触毛が生えている吻の幅約2mmを考慮すると直径18~22mm程度の範囲になります(触毛は湾曲しているのですこし短くなります。)。胴の幅は骨格的には約15mmですが、生きている時は体毛は膨らみますので、それらを考慮すると体の中心線から片側だけで考えますと、胴体の片側の幅と同じだけ胴体より外側に触毛が出ていることになります。

図2は横から見た写真です。通常は、これくらいの範囲を対象にしていると思われます。しかし、触毛は動かすことができ、前方に集中しているときは、図3のように触毛を前方に倒したり、休息しているときは、図4のように体につけたりすることもあります。広範囲の情報を得ようとしたり、特定の方向だけの情報を収集しようとしたりする触毛の動きは、まるでパラボラアンテナを広げたり、しぼったりしているように見えます。

 

図1 トウキョウトガリネズミの触毛による標準探知範囲(個体差は若干あります)
図2 通常の行動時の触毛範囲を横からみた状態
図3 前方の状況を最大限探知しようとしている場合は、触毛を前方に倒している。
図4 安心していたり、探知しようとしていない場合は、触毛は通常よりも体に沿って倒されている。

冬季の飼育状況について 3

トウキョウトガリネズミの冬毛と夏毛の差が分かり難いですので、その差を下記の写真で比較してみました。冬毛は、夏毛と比較すると背面が黒く、腹面は白くなりコントラストが強くなります。また冬毛はビロード状に見えますが、夏毛が剛毛感が強いです。地肌の色はピンクですので、夏毛の時は毛が薄いところで、地肌のピンクが見え隠れしますが、さすがに冬毛の場合は見えません。また、冬毛にも個体差がみられ、写真のように黒く見えるものもあれば、白っぽく見える個体もいて、結構バリエーションが見られます。

 

左が冬毛。背面は黒く、腹面は白くなり、コントラストがはっきりする。右は夏毛から冬毛に換毛し始めた時。背面の黒い部分が換毛が始まった部分。この黒い部分が全面になると左の写真のようになる。
冬毛でも、白っぽく見える個体

冬季の飼育状況について 2

元旦に続いて、2日にも大きな災難が起こってしまいました。元旦に地震がおこらなければ、この航空機事故も起こらなかったかもしれません。なくなられた方のご冥福をお祈りします。

冬季の飼育状況についての続きですが、極寒に冬眠しないなら、冬毛はどのようになっているかという質問を良くされます。さぞやモコモコになっているのではと思われると考えます。しかし、飼育していると個体差があり、換毛が途中で止まっていたりします。まずは、現在飼育しているトウキョウトガリネズミ3個体とヒメトガリネズミ1個体の状況を見てください。同じ状況で飼育しているにも関わらず差があることがわかってもらえると思います。冬毛と言っても様々な状態が確認されていて、奥が深そうです。

ヒメトガリネズミの換毛状況。背中の黒くなっている部分が冬毛。
トウキョウトガリネズミ飼育No.6。全体的には夏毛みたいだが、背中の右側面(写真では左側)の一部が黒くなり始めている。
トウキョウトガリネズミ飼育No.7.首と背中の境目で黒くなっているところが冬毛。
トウキョウトガリネズミ飼育No.8。全体がまだ夏毛みたいな色。

謹賀新年 冬季の飼育状況について1

明けまして おめでとうございます。

HPを更新しようとしている時に、新年早々震度7の地震が発生しました。まだ、被害情報も全く分からない状況で心配です。東日本大震災の際、北海道浜中町の霧多布湿原センターに勤務しており、津波から非難してきた方を受け入れる立場でしたので、その晩、みなさんがとても不安な夜を過ごされていたことを思い出しました。被害が少ないことを祈るばかりです。

久々のHPの更新になります。現在トウキョウトガリネズミ3頭、オオアシトガリネズミ2頭、ヒメトガリネズミ1頭の計6頭を飼育しています。2週間程前までは、エゾトガリネズミ1頭も飼育していたのですが、寒さが急に厳しくなり最低気温がー12℃~13℃の日が数日続いた日に死亡してしました。気温が原因なのかは不明ですが、これから少しの間、冬の寒さの中で生きている飼育下のトガリネズミの行動について紹介していきたいと思います。

まず、現在の飼育方法ですが、外気温より1~2℃高い小屋の中で飼育し、何れの種の飼育ケースにも雪は入れておらず、ウサギなどの小型動物用の床材として市販されている木製チップで7~8cm程度敷き詰め、その上に牧草を同程度入れた状態に飼育しています。夏よりは2倍程度増しの状態で、床材などを入れていますので、個体がどこにいるのか確認するのが大変です。すなわち、生存確認をするのに時間がかかるというのが、冬場の飼育で手がかかる作業の一つです。

 

本日素直に顔を見せてくれてトウキョウトガリネズミ

9月3日にしらぬかトウキョウトガリネズミ展が無事終了しました。

9月3日に無事「しらぬかトウキョウトガリネズミ展」が終了しました。来場していただいた方、また関係者の方々に改めて御礼申し上げます。

実は、展示期間中に新型コロナを発症してしまいました。当初私自身は、2日ほどで峠を越え翌週には会場に行くことはでき、その後の「おはなしの会」などは、関係者の方々にご支援いただき無事終えることができました。しかし、その後緊張が緩んだのか体調が思わしく無い中、嶮暮帰島における捕獲調査、この冬の研究のために飼育する個体の選別のために一時期飼育個体数が増えたこともあり、トガリネズミの飼育するだけで精一杯という日々が続いておりました。そして、HPにトウキョウトガリネズミ展終了の記事を載せること自体できませんでした。また、会場にてアンケートでご質問していただいた方に対する返信もやっとできたところです。大変失礼しました。

今回の「しらぬかトウキョウトガリネズミ展」には、期間中に250人ほどの方にお越しいただきました。また、トガリネズミのおはなしの会には、定員50名のところ70名の方に来ていただきました。改めて御礼申し上げます。

やっと、色々なことにも目処がつき、また体調も気力も回復してきましたので、徐々にHPの更新を行って行きますので、よろしくお願いします。

<最終日の状況>閉館間際まで多くの方に見てたいだきました。

展示を楽しんでもらうためのヒント(オオアシトガリネズミ編)

飼育していると個体の個性が出ます。展示しているオオアシトガリネズミは、流木の下がとてもの好きなようです。飼育ケージの中に入れてある流木は、かなり外からも見えるような構造になっていますが、本人にはあまり周囲から見られているという認識がないようです。寝ている姿や毛繕いなどリラックスしている行動が見る事ができます。

オオアシトガリネズミの多くは、飼育ケージ内にある草を丸めて巣を作り、そこを主に利用する個体が多いですが、今回草が少なめになっていることもあり、流木の下を主に使っているのかもしれません。しかし、多くの個体は、草が少なくても草を集めてボール状の巣を作りますので、展示している個体は他の個体よりも流木の下を好んでいるように見えます。

私は、オオアシトガリネズミの行動は見ていると、ちょっとドジなやつだけど、憎めない可愛いやつと感じてほのぼのとします。みなさんはどのように感じますでしょうか。今回、オオアシトガリネズミの行動は展示している4種の中でも良くみることができますので、少し長めに見てもらえればと思います。

展示個体のオオアシトガリネズミは、流木の下がお気に入りで、寝ている姿やくつろいでいる姿を見る事ができます。

展示を楽しんでもらうためのヒント(トウキョウトガリネズミ編)

開催して2日が終了しまし。2日間で50人ほどの方に来場いただきました。ありがとうございます。本日は休館日でした。明日から来ていただける方に、より楽しんでもらえるためのヒントを紹介したいと思います。

今回はトウキョウトガリネズミ編です。世界最小級の哺乳類ですからぜひ見ていただいきたいと思います。

トウキョウトガリネズミを見るためには、以下のポイントがあります。     1)トウキョウトガリネズミは草の中で休んでいても短いと30分程度、長くても約2時間くらいすれば出てきます。したがって、少し時間をおいてから再チャレンジしてください。

2)トウキョウトガリネズミが出てくるポイントがあります。

*一番の観察ポイントは、ノラニンジンのつぼみ中に居るときです。ここは、間近で見る事ができるので、トウキョウトガリネズミの顔の細部まで見る事ができます。                                 *草とチップの間、チップの中にトウキョウトガリネズミが作った通り道があります。特に下の写真の2と3の位置で良く休んで(寝て)いますので、ここを探してください。                              *アクリルパイプを設置しているので、アクリルパイプの中を移動するトウキョウトガリネズミも見る事ができます。しかし、素早く移動することが多いので、走るトウキョウトガリネズミしか見る事ができないかもしれません。

トウキョウトガリネズミは、この3点に良く出てきます。
ノラニンジンのつぼみの中で、休んでいるところが見られます。ここで見ると顔を良く観察できます。一番のビューポイントです。
草とチップの間、チップの中に作られた通路でじっとしていることがあります。
草とチップの間に設置しているアクリルパイプの中を通過します。

本日から、しらぬかトウキョウトガリネズミ展の開催です。

いよいよ、8月5日本日から、トウキョウトガリネズミ展が開催されます。昨日の4日に、白糠町の公民館で展示に準備に行きました。

白糠町に14時頃についたら、すでに展示が90%完成しており、びっくりしました。白糠町の公民館の関係者や役場の方々のご協力で、すでに、パネレは設置され、展示するトガリネズミの個体を設置するだけという状態でした。微修正して、16時には完成しました。関係者の方々の熱意を強く感じました。この展示は、約1ヶ月間ととても長いですが、成功間違いなしと確信しました。関係者のみなさま、ありがとうございます。今後1ヶ月よろしくお願いします。

ちなみに、展示準備完了の16時以降18時までの2時間で、展示を見ていだき、公称観覧者20名ということになりました。実は、公民館に来た小学生がトガリネズミ展を見て感動して、家に戻って両親を連れて再度来てくれたそうです。すでに、公式開始前にリピーターさんができました。とてもうれしいです。期間中にリピーターさんが増えることを期待したいと思います。

ぜひ、これを見ていただいている方々も、機会があれば展示を見ていただければと思います。また、これから展示会場よりも詳しいトガリネズミについての情報を展示期間中は、アップしていきますので、よろしくお願いします。

8月4日展示準備終了直後の状況

「しらぬか トウキョウトガリネズミ展」の目的と経緯 その1

今回の展示は、私達(河原と六田晴洋氏)の趣旨に賛同していただいた白糠町さんが、町主催として開催されるものです。

今回の目的は、以下の3つです。                          1)北海道に生息しているトガリネズミ属4種の生体を同時に展示する    2)六田晴洋氏によるトウキョウトガリネズミの写真と映像とのコラボで、よりトウキョウトガリネズミを知ってもらう                 3)トウキョウトガリネズミを通して、恋問海岸、白糠町の自然の素晴らしさを知ってもらう

私は、これまでトウキョウトガリネズミの展示を、北海道浜中町の霧多布湿原センター、東京都の多摩動物公園、札幌市の円山動物園、北海道大学総合博物館など、延べ10回以上行ってきました。

しかし、これまでと異なるのは、北海道に生息するトガリネズミ属4種が、実際に同じ場所で生息している地元で、その地元産の個体を4種同時に展示することです。このことは、すべてが初めての試みで、大げさに言えば世界初挑戦ということになります。

この展示は、希少種に選定されているトウキョウトガリネズミの生態研究と希少種の域外保全技術開発の一環としても行っているものです。この展示は、多くの方々にトウキョウトガリネズミを知ってもらうだけではなく、この展示自体が、生態及び域外保全技術開発研究に貢献する知見を得るためにも行っています。

2007年浜中町と多摩動物公園の共同開催展、霧多布湿原センターにて、
2007年浜中町と多摩動物公園の共同開催のトウキョウトガリネズミ展の様子(霧多布湿原センター)